- 子どもから大人までの軽度の発達障害(自閉症スペクトラム障害)について -


自閉症スペクトラム障害とは?
自閉症スペクトラム障害は、従来、知的な遅れのある自閉症や知的な遅れのないアスペルガー症候群、自閉症やアスペルガー症候群にも該当しない、より軽症の特定不能の発達障害(PDD-NOS)と呼ばれていた典型的な診断名も含むものです。スペクトラム=連続体として捉えるため、従来の典型に当てはまらなくても一部特徴がみられる、いわゆるグレーゾーンの方も捉えやすくなりました。
当院では特にグレーゾーンの方に対してもより詳細に特徴を把握させていただき、より患者さんに合った支援を提供しようと考えております。

自閉症スペクトラム障害の特徴
 DSM-Xでは@相互的社会関係の障害・コミュニケーションの障害、A行動、興味、および活動の限定された反復的で常同的な様式(こだわり)が中核症状と定義されています。また、DSM-W-TRでは含まれていなかった知覚過敏・鈍麻がAの一部として追加されました。しかし、この2領域での困難があまりみられず、以下のような特徴の一部がみられる方も多く、グレーゾーンに当てはまる可能性があります(@のみの場合は社会コミュニケーション障害といいます)。

[パニック(混乱)]
 いつもの状況なら安定していられるのですが、新しい場面や状況の変化、予期せぬ出来事に弱く、思考や感情のパニック(混乱)やイライラ・不安が起きやすい。先読みが苦手で予測がつきにくいことも影響していると考えられます。

[知覚や感覚の特徴]
 人の顔が覚えられない相貌失認、距離感が測れず身体をよくぶつけてしまう、怒りの感情が怖い、大きな音が怖い・雑踏では会話が聞こえない聴覚過敏や選択的注意の困難さ、特定の臭いへの著しい苦手さや微かな臭いも感じ取る嗅覚過敏など五感の過敏さ等の問題、嫌な体験の映像的な記憶によるフラッシュバック、聴覚過敏やフラッシュバックにより睡眠のリズムが崩れやすい、温度感覚がかなり人と違っていたり、季節変化についていけず、気温や気候の変化ですぐ疲れてしまう、など。

[学習や仕事に関わる情報処理の特徴] 
 同時に2つ以上のものごとを考える、行うことが苦手な同時処理困難がみられ、感情や感覚といった内面の機能にも同時処理困難がみられることもあります。認識面の例として、些細な変化や場面の移り変わりで以前と違うものと認識してしまうため行動が取りにくい、整合性が取れずに疲れる、混乱する。記憶面では、目で見て覚えて手元で書こうとすると覚えた内容を忘れてしまう、多く見たり聞いたりすると頭の中で記憶が保てなく混乱する(全部無理して覚えようとすることで生じる場合もあります)。どこから注目してよいかわからず、複雑な情報になると手がかりが掴めない、細部への過集中があって全体を見られない、もしくは全体を見ながら細部の情報が扱えない、言葉で説明ができず、何とか説明しても主観的な体験やイメージで述べてしまい通じない、興味を持てないことには集中できずに一般的な学習が進みにくい、逆に興味があるとやれますが過集中やこだわりを伴って止められなくなる、など。

[その他]
 手足がタイミング良く動かせないなど協調運動の困難さ、器用さの必要な動作ができないのに細かい指先作業はよくできるなどの器用さと不器用さの混在が見られる、(感覚過敏などの影響で)人ごみ、雑踏では周囲の刺激から落ち着きがない、(こだわりの影響もあり)気になるものがあると注意が逸れていってしまう。
 このように多岐に渡ります。

 こうした特徴から、日常生活や社会生活が送りにくくなってしまい、相当な負担を感じて過ごされてみえるのではないでしょうか。他者と同じようにいかず、自分なりの対処を模索して四苦八苦されてみえるでしょう。発達障がい者支援法が成立するなど以前より広く知られるようになってはいるものの、個々によりその特徴や表れ方は様々であり、自ら説明がしにくく、まだまだ周囲に理解されにくい、発見されにくいことも多いと思います。

特徴の表れ方
幼児期から特徴が把握しやすくなりますが、ことばや身体運動の発達の遅れがない場合、見過ごされやすく、また、保育園などでは目立った問題が見られなくても、小学校入学以降、学習・集団行動・対人関係などで問題が生じて初めて障害が疑われる場合も多くみられます。

DSM-Xでは幼児期で兆候があっても、社会的要求を何とか受け入れて障害として表れない場合や、生きていくうちに学んだ対処方法で障害が隠されている場合もあるとしています。これは、大人になってから初めて障害があるのではないか、と気づく方がいるということを示しています。

子どもの場合
小学校入学以降になって障害が疑われる場合、すでに二次障害が出現していることがあります。二次障害は発達上の特徴に生活経験の影響が加わり、不登校などの適応困難や朝の頭痛や腹痛、イライラ、チック、場面緘黙といった症状などが生じることを指します。また、不登校などの適応困難の要因として、辛い体験のフラッシュバックや感覚過敏などから周囲のざわつきなどの刺激が辛く、教室に入れないなどがあげられます。

小学校3〜4年生以降、社会性、コミュニケーション、こだわりの問題が悪化することがあります。もちろん、ご本人の成長もみられますし、環境から配慮があるなど何とかやっていけることもみられます。しかし、環境の変化についていけない場合も多くみられ、周囲の子どもの思考・感情が多様化し、友人関係や集団のあり方も変化していくため、学校でやることも増えますし、先生の指示も次第に抽象的になったりします。例えば、相手の感情の動きや先生の口頭での指示などは目に見えず、情報をキャッチできないとすると、こうした変化に対してうまく対処できなくなるでしょう。いじめを受けることもあり、ストレスを強く感じてしまい、自分はダメだと思い込んで、自己評価が低下して自信をなくされることもみられます。

小学校高学年では、例えば幼稚園で多動傾向がみられていた子どもが落ち着いたり、周囲の子どもにも異質な他者を受け容れようとする傾向がみられるようになります。また、知的能力が高い子どもはこだわりや映像記憶を駆使し、大変成績がよいため、周囲から肯定的な評価を得られることがあり、マイペースで学校生活を送っていける場合もみられます。このように、対人関係では周囲に受け容れられる「よい体験」ができたり、絵画や音楽、運動、学習などで持てる力を発揮できていると成果を認められる体験もできるでしょう。こうした評価や体験から適応困難が収まることもみられます。その反面、思春期にさしかかっており、自分は他人と違うと気づいて悩み始めます。また、うまくできなくてもみんなと仲良くしたいと思いながらも、集団への同調は難しく、自分のやり方、在り方を保とうというこころの働きもみられます。こだわりが強まったり、対人緊張が強くなり始める時期でもあり、二次障害が悪化することもみられます。-Xでは幼児期で兆候があっても、社会的要求を何とか受け入れて障害として表れない場合や、生きていくうちに学んだ対処方法で障害が隠されている場合もあるとしています。これは、大人になってから初めて障害があるのではないか、と気づく方がいるということを示しています。

大人の場合
以後、生活経験や対人関係などの影響を受けながら過ごしますが、年齢を重ねていくことで社会参加の機会が増えるなど生活環境の拡大が起きます。それに伴って、自立を求められても必要な支援が得られない、周囲との違いに気づいて孤独感を感じる、対人関係では目に見えない人の気持ちや考えのウラオモテがわからず、だまされたと思うなど被害的な体験を繰り返してしまうなどの悪影響から対人不信や対人緊張の悪化、自己評価の低下がみられるようになります。せっかく就労しても職場での叱責などの失敗体験により躓くことで引きこもりや不就労がみられます。障害があることでストレス対処が難しく、むしろストレスを溜めやすいことから二次的な症状も出現します。二次障害として、適応障害、不眠、不安障害、抑うつ状態やパニック、摂食障害、偽性躁うつ病、偽性性同一性障害、強迫性障害、解離、特定の恐怖症、精神病様の症状がみられるようになり、長期化・慢性化することもあります(重ね着症候群)。主体性を見失い、自己否定的となり、生きづらさの中から出られないような感覚やイメージに陥られてしまうこともあるでしょう。できるだけ早く特徴を掴み、よりご本人らしく生きられるようにした方がよいと考えられます。
当院の考え方
自閉症スペクトラム障害はレッテルではありませんし、診断によって自立した生活への可能性が閉ざされるのではありません。

最近ではあまりにも当たり前に目にする病名であり、ネガティブに一般の人々が使うため、当事者にとってはマイナスに働いてしまっているのではないかと懸念しております。

当院では診断名から人物像を決めつけて患者さんに接するのではありません。個人の特徴をできるだけ詳細に把握し、能力を活かして生きていけるようにすることを目標として支援いたします。うまくいっていないように思われるところでさえ、患者さんの意思や意欲、能力など潜在的な可能性が存在するとも考えております。たとえば、昆虫大好き少年で他のことに目が向きにくい方が、高校入学前に高校の生物学を全て終わらせていたというエピソードがあります。このように、興味の限局やこだわりと呼ばれるものでも障害や症状と断定できない、実は可能性を秘めたものだと理解することができます。否定的に捉えられやすいところが自信に繋がるものとなる可能性が存在するのです。

また、特徴に合った適応の仕方や環境があります。適応へのアドバイスをお伝えしたり、各種就労支援の利用など環境の調整もはかっております。たとえば、不就労であった30代男性の方が当院を受診しながら、愛知障害者職業センターの利用を経て障害者枠で就労し、長く続けてみえます。

当院では様々な手段を用いて患者さんの状態や状況、可能性をできるだけ総合的に捉えて支援ができるように努力しております。医師の診察や投薬、心理士とのカウンセリングだけでなく、心理テストも活用してできるだけ客観的に特徴を把握するなど支援をさせていただきます。社会資源の積極的な利用もさせていただきます。診察やカウンセリングは、感覚過敏や他者に合わせ過ぎてしまう傾向などから周囲の影響を受けて主体性を失いやすいことなどにも配慮して実施させていただきます。これまで苦労されたことも含め、生きづらさがありながらも何とか生きていける、自分の主体的な人生であると少しでも感じていただけるようになっていただければと考えております(レジリエンスの獲得)。


まとめ
@ 1人1人でかなり能力のバラつきがあり、スキルの高いところと低いところが混在し、そのパターンが通常と異なっている。
A 軽症例では青年期・成人になってから二次障害で生活に支障をきたすことが多い。
B 個人により、その地域文化になじんでいれば問題はない。
C 知的障害の合併割合はそれ程多くない。
D 都会生活では個人の適応特性以上のより高い社会性が要求されるため、不適応となりやすい。


当院で主に実施していること
@ 関わりを中心とした精神療法(診察やカウンセリング)
A 症状軽減を図る薬物療法
B 客観的データの測定とその解釈を中心とした各種心理テスト
C 丁寧な心理テストの報告書
D ご本人の特徴に合わせた周囲へのアドバイスを記入した意見書の作成
E 就労支援や適応指導教室などの社会資源の利用


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